2009年4月7日火曜日

自己の会話的構成

私たちと社会との関係を生み出すためには,
  • 何が存在するのか(「存在論(ontology)」)
  • どんな振る舞いが適切か(「倫理(ethics)」)
について,たとえ素朴でも何らかの共通理解をもっている必要がある.

「存在論」
共通の言語による副産物.「現実(reality)」についての共通理解.コミュニケーションが可能となるためには,お互いが似たような状況で似たような言葉を用いる必要がある.つまり「求心力(centripetal force)」の作用を受けている.

「倫理」
倫理の基盤は現実についての共通理解.人は様々な社会的関係をもっており,より多くの関係に参加すればするほど,ローカルな「現実」がたくさん生まれる.そしてある関係からある関係に移る際に,他の関係もひきずっていく.このことはある関係における「現実」すなわち秩序を脅かす.この脅威を避けるのが「倫理」であり,「救心化」を促進する.

「自己」
自己は共同体の存在論の中に現れる.そして自己には共同体の倫理が伴う.これらが「私」という主体的な行為者という現実を生み出している.

社会的釈明(social vindication):アイデンティティと責任
私たちの行為が矯正(reformation)されることは,組織化された社会に生きること.矯正は秩序を維持するための手段であり,関係における倫理の作用.
関係の多様化に伴い,私たちの関係の中にある暗黙の倫理観(求心的傾向),すなわち秩序は脅かされるようになった.その一方で秩序を回復する手段も生み出され,それが「社会的釈明」.

会話における隣接対(adjoining pair)から見た社会的釈明
  • 挨拶−挨拶
  • 質問−回答
  • 招待−受諾or辞退
  • 要求−承諾or拒否
社会的釈明はこうした隣接対の後半に現れる.特に,ある関係における承認された一人から他のアイデンティティに対する「非難(criticism)」への反応として,関係を「修復」する行為が社会的釈明.

「修復」の二分類
  • 「言い訳(excuse)」:自己についてのモダニズム的理解に基づく.主体性が関与していたかどうかが問われる.関係性の中にまだ自分がいることを主張.秩序に挑戦するものではない.
  • 「正当化(justification)」:一般に受け入れられている現実に異議を唱える.個人のアイデンティティにとっての問いを,社会的関係についての問いにすり替えている.

対話はどこから力を得ているか?
  1. 非言語的なシグナル(表情,注視,ジェスチャー,姿勢など)によって,社会的関係における言葉の機能は変わる
  2. 物質的なコンテクスト(服装,所持物,場所,時間,天候など)も言葉に影響を与えている
  3. コミュニケーション・メディア(電話,電子メール,スピーカーなど)も言葉に影響する.「メディアはメッセージ」.

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