2011年10月29日土曜日

交流分析2級認定試験その1

明日は試験.今日の講習の内容をまとめておきます.

0.倫理要綱
全科目60点以上で合格だけど,これで80%以上取得すると,他の1科目にプラス10点できる大事な分野.試験範囲は,日本交流分析協会に入会すると送付されてくる「倫理要綱」.○×式とのことで,間違いやすいのは以下の二点.
  1. カウンセリング等で得たデータは,未成年であっても,本人が得られれば公表することができる→未成年の同意は無効
  2. 協会に投稿された論文等は個人の著書等に引用することができる→正式な許可が必要
1.自我状態
交流分析の基礎となる自我状態について問われるのは以下の5点.
  1. 自我状態とは→思考・行動・感情の基になる心の状態で,P(親),A(大人),C(子供)の三つの状態がある.
  2. 構造分析とは→PACの三つの自我状態が幼少期における親等から影響によってどのように形成されてきたのかを分析すること.
  3. 機能分析とは→「今,ここ」における心の働きがPACのどの自我状態の機能(CP, NP, A, FC, AC)を用いているのかを分析することで,対話分析やストローク分析いより人間関係の改善に役立つ.
  4. 5つの自我機能の肯定と否定:
    • CPの肯定:正義感,模範的,道徳的,善悪感,否定:権威的,威圧的,批判的,封建的
    • NPの肯定:養育的,優しさ,保護的,親切,否定:甘やかす,過保護,お節介,身びいき
    • Aの肯定:論理的,合理的,客観的,計画的,否定:機械的,冷酷さ,打算的,理屈屋
    • FCの肯定:創造的,行動的,自発的,明朗,否定:軽率さ,衝動的,奔放,わがまま
    • ACの肯定:遠慮,気配り,平和に,穏やか,否定:依存的,閉鎖的,従属的,反動的
    1. ある自我機能を上げる方法
    • CPを上げる:自分の考えを明確にする,規則を守り,他者にも求める,他人の意見にすぐさま賛同せず,問題点があれば反論する,グループの意見をまとめあげる
    • NPを上げる:初対面の人に声をかけて楽しい会話をする,親睦会等の世話役を買って出る,挨拶の時に笑顔を絶やさない,ねぎらいや励ましの言葉をかける
    • Aを上げる:新聞の社説を自分の言葉でまとめる,相手の言動を観察する,問題が生じてもその解決の糸口を探る,原因や証拠を追求する
    • FCを上げる:大勢の人に加わって楽しむ,自分の好きなことを話す,子供と楽しく遊ぶ,周囲を喜ばせる
    • ACを上げる:相手の話をまず聞く,相手の気持ちを優先する,謙遜の言動を心がける,相手のペースに合わせて他者の協力を求める
    2.対話分析
    対話の種類:
    1. 相補交流:相手から期待通り(期待した自我状態からの)の反応が得られ,理論的にはいつまでも会話が続く.ただし,時間の無駄遣いになるような非生産的会話になる場合がある.
    2. 交差交流:相手から予想外(期待した自我状態以外からの)の反応が得られ,会話が途切れたり,嫌な気持ちになる.しかし,ゲーム等の負の会話を断ち切ることができる.
    3. 裏面交流:表面的な自我状態間とは異なる自我状態間のやり取りが行われる
    3.ストローク
    ストロークとは「存在認知の刺激の一単位」であり,以下の三つに分けられる.
    1. 肯定的か否定的か:人間はストロークがないと生きていけないため,たとえ否定的なストロークでも得ようとする
    2. 身体的か精神的か:幼児期の身体的ストロークは重要であり,また死ぬまで認識できるストロークでもある
    3. 条件付きか無条件か:否定的なものは条件付きで,肯定的なものは無条件で
    ストローク経済の法則とは以下の5つ.
    1. 与えるストロークがあっても,与えない(与え上手になれ)
    2. 求めるストロークがあっても,求めない(求め上手になれ)
    3. 欲しいストロークがあっても,受け取らない(受け取り上手になれ)
    4. 欲しくないストロークであっても,拒否しない(断り上手になれ)
    5. 自分にストロークを与えない(自分を褒め上手になれ)
    4.人生態度
    自分や他者,あるいは人生に対する基本的な立場や構え方であり,行動を起こす基盤となっているもの.乳児期から幼少期にかけての親等とのふれあいを通じて形成される.以下の四つのパターンがある.
    1. I'm O.K., You're O.K.(I+U+):協同
    2. I'm not O.K., You're O.K.(I-U+):逃避
    3. I'm O.K., You're not O.K.(I+U-):排除
    4. I'm not O.K., You're not O.K.(I-U-):不毛
    私たちは常に同じ態度でいるわけではなく,上の四つのパターンを行き来しながら生きている(人生態度のゆらぎ).1以外の状態にいる場合にはできるだけ早く1に戻ってくることが必要であり,4→3→2→1の順に戻って行く.
    • 4にいる場合は,自分も他者も,誰かの役に立っている大切な存在でることに気づく
    • 3にいる場合は,謙虚になり,他者の意見を受け入れる
    • 2にいる場合は,他者と一緒に何かを成し遂げ,自信を回復する
    5.心理ゲーム
    ストローク飢餓から脱するために,否定的ストロークを得るために行う不快なやりとり.

    特徴:
    • 反復性
    • Aがほとんど働いていない(気づかない)
    • 本人も気づいていない隠れた意図(人生態度の証明)
    • ラケット感情によるPayoff
    • グレースタンプ(ラケット感情の蓄積)
    心理ゲームをする理由
    • 孤独(ストローク飢餓から脱出)
    • 自分もしくは他人がO.K.でないことを証明する
    • 時間を構造化してストロークを補充する
    • 自分の人生脚本を強化・進展させる
    ゲームの公式
    • 仕掛人+乗る人→応答→転換→混乱→結末
    ゲームの図式:裏面交流の対話分析図

    ドラマ三角形:迫害者,犠牲者,救援者の三つ巴

    ゲームをやめるには
    1. 相手の誘いに乗らない:Aを使ってゲームの罠を避ける
    2. 役割を演じない:迫害者はAを使って条件付き否定ストロークを,犠牲者はAで自分をディスカウントしない,救援者はAで相手に気づきをもたらす
    3. ゲームを中断する:相手の意図を見極める,予想外の反応をする,結末に至らせない(時間的・物理的・精神的距離を置く)
    4. 結末のラケット感情を持たない:Aを使って割り切る

    サウナ好きのホテル選び2

    更新ままならぬままにもう10月も終わり.交流分析についての本を読んで,読んだ分をまとめて行こうと思いつつ,はや1ヶ月.そうこうしている間に認定試験の日は明日に迫っている.そう,今日はまた大阪に来ている.そして今回もサウナ付きのホテルをなんとかゲット.今回は「スーパーホテル大阪天然温泉」.大阪阿倍野駅から徒歩5分くらい.源泉は33.7度とあるから加温はしているようだ.ま,おれはサウナしか入らへんから関係ないけどね.ここのサウナはなかなか広い.おっさんをギッチギッチに並べれば20人は入るやろ.温度も90度くらいあり,乾式サウナとしては標準的.そしてなによりいいのが水風呂.ゆったり独りで入るのには十分な広さで,しかも温泉を冷やしたものを使っている.サウナがあると温泉があってもほとんど入らないおれにとってはうってつけだ.これで1泊6千円弱.ビジネスマンらしきおっさん達が多いはずだ.ま,おれも年齢的にはおっさんやけど.大阪の定宿にしたいホテルだな.

    2011年8月30日火曜日

    交流分析の基礎:機能分析

    3つの自我状態と5つの機能は上のような3つの円による模式図で表されます.Childの円が一番下で,Parentの円が一番上,その間にAdultの円がきます.ChildとParentの円はそれぞれAdultの円の最下端と最上端とで接するのがポイントです.ChildとParentの自我状態にはそれぞれ二つの機能がありますので,それぞれの円を半分に切り分けて表示します.この切り方は縦でも横でもいいようです.
    私たちは日常生活の中で,いろいろな事を考えたり(思考),感じたり(感情),行動したり(行動)していますが,それにはこの5つの機能のどれかを使っています.これら5つの機能はどれが良くてどれが悪いということはありませんが,私たちは自分に馴染みの深い機能を使いがちです.それぞれの機能には良い面(肯定的側面)と悪い面(否定的側面)とがあります.自分がよく使ってしまう機能とあまり使わない機能を把握するとともに,それぞれの機能の肯定的側面と否定的側面を理解しておくことにより,自分を変えることができます

    CP: Controlling Parent
    「相手のためを思って自分の価値基準で思考・感情・行動」
    • CPが適切に働いていると,正義感が強く,道徳的で,規則を守り,責任感があり,他者を教え導くといった,肯定的側面が出ます.
    • CPが過剰に働くと,権威的・封建的であり,批判的で,偏見に満ち,独断的で,執着心が強く自分の意見を他者に押し付ける,といった否定的側面が出ます.
    • CPが不足すると,責任感がない,意思決定できない,態度が曖昧,ルーズ,他者の言ったことを鵜呑みにする,など,他者の信頼が得られなくなります.
    NP: Nurturing Parent
    「相手のためを思って相手の価値基準で思考・感情・行動」
    • NPが適切に働いていると,思いやりがある,優しい,包容力がある,他者を励ましたり勇気づけたりする,相手を信頼する,といった肯定的側面が出ます.
    • NPが過剰に働くと,世話を焼きすぎる,相手を甘やかす,お節介,親切の押し売り,相手に過剰に期待する,といった否定的側面が出ます.
    • NPが不足すると,周囲の人に関心がなく,冷淡で,誰にも愛情が持てず,仲間を受け入れたり,相手を配慮したりすることができない,など,他者に敬遠されてしまいます.
    A: Adult
    • Aが適切に働いていると,計画的で,事実に基づいた論理的な思考や行動ができ,周囲の状況を冷静に観察し,その場に応じた適切な判断が取れるといった,肯定的側面が出ます.
    • Aが過剰に働くと,機械的で打算的,非人間的,温かみがない,口先だけで行動が伴わない,といった否定的側面が出ます.
    • Aが不足すると,無計画で場当たり的,情報に疎く,周囲に無頓着,など,人間関係に悪影響が出ます.
    FC: Free Child
    「自分のためを思って自分の価値基準で思考・感情・行動」
    • FCが適切に働いていると,明朗快活,自発的で何事にも意欲的に取り組み,創造的で,やる気があり,行動的,といった肯定的側面が出ます.
    • FCが過剰に働くと,お調子者で羽目をはずしがちで,自分勝手で軽率な振る舞いをし,自己中心的でわがままに振る舞ったり,横柄な態度をとったりするなど,否定的側面が出ます.
    • FCが不足すると,思ったように動けなくなり,気分転換ができず,無気力・弱気になり,萎縮して気力が乏しく,何事も楽しめなくなり,否定的感情を引きずり人間関係に悪影響が出ます.
    AC: Adapted Child
    「自分のためを思って相手の価値基準で思考・感情・行動」
    • ACが適切に働いていると,協調的で慎み深く,気配りが上手で,相手の言うことを素直に受け止め,平和的で穏やかな対応ができるなど,肯定的側面が出ます.
    • ACが過剰に働くと,依存心が強過ぎ,卑屈になり,安易に妥協し,指示されたことしかできなくなる反面,その反動が爆発するなど,否定的側面が出ます.
    • ACが不足すると,他人の言う事を聞かずに頑固で,意地を押し通し,協調性が欠如するなど,人間関係を阻害するようになります.
    これら5つの機能を場合に応じて使い分けられるようになることがよいようです.そのためにはAの機能が十分に働いている必要があります.なお,私が講習を受けた「特定非営利法人 日本交流分析協会」では,Adultにおける肯定的側面と否定的側面とを説明していますが,国際TA協会ではAdultには肯定的側面しかないとしています.欧米ではAが高いことが良しとされているのに対し,日本では,「知に働けば角が立つ」のとおり,Aが高すぎるのは人間的に好ましくないとされる風潮があるためのようです.

    2011年8月29日月曜日

    交流分析の基礎:自我状態

    大阪では交流分析士2級講座というものを受けてきました.企業を辞めてからのこの10年,ずっと授業をする側だったので,とても新鮮な経験でした.朝の9時から夕方6時まで,それを5日間,こんなに集中した日々は久しぶりです.それだけいろいろ考えさせられ,有益な講座でした.
    さて,交流分析(Transactional Analysis: TA)とはカナダ出身の米国の心理学者,エリック・バーンが開発した心理カウンセリングの手法です.バーン博士が,アル中患者のカウンセリングを行っている中で,患者の人格が急に変わることに気づいたことに基づいています.この知見によると,私たちの心の中には常に3つの自我があります.Parent(親),Adult(成人),Child(子供)です.
    私たちが生まれてから,まず最初に形成される自我はChildです.この自我は親(養育者)との関係性によって形成されます.通常の場合,生まれてからハイハイができるくらいまでの期間は,私たちは何をしても許されます.泣けばおっぱいをもらえたり,だっこしてもらえたり,おむつを替えてもらえたりします.そして笑えば誰もが喜んでくれます.その全存在をありのままに受け入れてもらえる状態です.
    しかしハイハイができるようになり,自分で動けるようになると,親との関係性が変化します.それまですべて受け入れられてもらえた関係から,親からの禁止と許可による関係性へと変化します.それを食べていいのかだめなのか,そこへ行っていいのかだめなのか,といった関係です.
    このようにChildという自我には二つの働き(機能)があります.前者のようにありのままに振る舞えるFree Child(自由な子供)と,後者のように親の禁止と許可に従うAdapted Child(従順な子供)です.そしてそれに対応してParentにも二つの機能があります.Free Childを培うNurturing Parent(養育的な親)と,Adapted Childを培うControlling Parent(支配的な親)です.
    生後数ヶ月もすると私たちは親が自分たちに向けた行動や感情を,私たちのParentの自我として蓄積していきます.そして12歳頃までに私たち「らしさ」が形成されます.母親(Nurturing Parent)との触れ合いが少ないと,大人になってから他者に親愛の情を示しにくくなる傾向にあります.逆に父親(Controlling Parent)との触れ合いが少ないと,社会的な慣習や規則を守りにくかったり,自分の存在価値をアピールしにくくなる傾向があります.
    私たちが成長していくと,このような親子関係を超えて,自分の置かれている状況や自分自身の状態を客観的に把握し,論理的に判断して行動できる状態になります.この時の自我状態がAdult(成人)です.私たちは2歳前後になるとままごと遊びを始めますが,これは親を客観的に見て理解したことに基づいた判断と行動です.私たちがAdultの自我を十分に成長させ,一人前に活用できるようになるのは12歳頃だと言われていますが,知識や経験を積むことによりそれ以後も発達して行く自我です.Adultの自我は脳の前頭前野の発達と関係するのでしょう.前頭前野が神経細胞的に完成するのは二十歳過ぎと言われていますので,そのくらいまでは発達し続ける自我なのだと思います.
    交流分析は,自分と他者の3つの自我状態と5つの自我機能がどのように関係し合っているのかを分析することにより,自分と他人を理解していくことが基本となります.

    2011年8月12日金曜日

    サウナ好きのホテル選び:大阪その1

    えー,今大阪に来てます.来てます,来てます,気温が来てます!やっぱり札幌とは大気のまとまわりつきかたが違いまんな.つい先週,結婚15周年で夫婦で行ってきた福岡・長崎を思い出すわ.上五島列島,海がめっちゃきれいやった.たくさんあるかつての隠れキリシタンたちの協会も一つ一つが個性があってよかった.とそれはさておき,大阪.札幌の我が家は温泉付きのマンションだが,私が好きなのはサウナ.出張が多いので,サウナのあるホテルにできるだけ泊まる.そして今日も.アパホテル大阪天満.アパ系列のホテルは大浴場・サウナ付きが多いのでよく利用する.今回は二度目の利用.せっかく出張で全国のサウナ付きホテルに泊まる機会が多いので,今日から『サウナ好きのホテル選び』のコーナー,はじまりはじまり.
    さて,ここアパホテル大阪天満,サウナ好きから言わせると,サウナに入る人間の気持ちがまったく分かってへん!!理由は三つ.まず,水風呂がぬるい.25度近くあるんじゃなかろうか.これではサウナで芯からアツアツになった身体が冷えん!サウナ発祥の地,フィンランドを見よ.彼らは極寒の中,サウナを出て,凍った湖に開けた穴に飛び込んどるやないか.そう,身体がしびれるくらいの冷たーい水風呂なくして,サウナに入る喜びはない!次.給水機がない!サウナ好きはサウナと水風呂を行き来する.当然ながら失われるのは身体の老廃物だけではなく,水分もや.サウナに入って,水風呂に浸かり,水分補給をしてからまたサウナに入る,これがサウナ好きの王道やろ.給水機なかったら干涸びてまうやろ!最後.サウナが狭い!おおよそ京間の一畳,江戸間の1.3条ってとこか.腰掛けは一段のみで奥行きは約40cmほど.これでは腹筋も腕立て伏せもできん!サウナで筋トレして身体を絞るのが趣味の私にとっては,これは痛い!ってこれはサウナ好きとは関係ないか.まぁサウナがないよりかはましかな.文句ばっか言っても,また明日の朝入るんだけど.それにしてもあと5日もここに泊まるのかぁ.サウナ三昧だと思って楽しみだったのに...あ,ここのホテルのウリである人工温泉とやらにはまったく入らんかったわ.そのレポートはまた明日にでも.

    2011年6月7日火曜日

    音楽と言葉

    一年ほど前までアマチュアオーケストラでコントラバスを弾いてたが,バドミントンの方が忙しくなって退団した.バドミントンの上達はここ十年が勝負.でも楽器は退職してもできると考えた.といっても楽器の練習まで辞めてしまったわけではなく,今でもピアノ,ヴァイオリン,時々コントラバスの練習をしてから出勤する毎日.楽器の練習は,バドミントンの練習と同じくらい好きだ.ただし,楽器といっても,ピアノと弦楽器ではちょっと練習の醍醐味が違う.ピアノは右手と左手で同じような動作をしているが指の動きが異なるのに対して,ヴァイオリンやコントラバスは,右手と左手で異なる動作をしているが,動きは連動している.なので,ピアノの場合,基本的に伴奏を担当する左手を練習し,次にメロディを担当する右手を練習してから,両手を合わせるというのが,私のような初心者の練習方法となる.この,左手と右手が統合されていくプロセスが快感なのだ.まさにゲシュタルトが形成される瞬間だ.ゲシュタルトとは,部分と部分が統合されて,部分の総和以上のまとまりのこと.この,部分の総和以上のプラスαを生み出しているという感覚がピアノの醍醐味だ.対する弦楽器の練習の喜びはいい音が出ること.弦楽器の場合,左手だけでは音が出ず,右手だけでは開放弦の音しかでないので,最初から左手と右手を協調させることが練習となる.もちろん初心者,あるいは練習を始める準備としては右手で開放弦だけ弾くが,「音楽」を奏でるには両手が必要になる.そしてその練習の目的はいい音を出せるということにつきるだろう.もちろんピアノでもいい音を出すことが追求されるが,基本的には強弱しかない.だからこそピアノでいい音を出すことはとても難しいと思う.それに対して弦楽器のいい音は,左手の指で弦を押さえる強さや音程,音程を細かく上下させるビブラートに加え,右手のボーイングでの弓を弦に当てる強さや擦るスピードなどの組み合わせとなり,非常に複雑だ.この多様な組み合わせの可能性の中から,いい音を探り当てた時は自己陶酔の世界に浸ることができる.ただ,ピアノにしろ,弦楽器にしろ,全体(ゲシュタルト)があっての部分,つまり全体としての音楽があっての,個々の音である.ゲシュタルトとしての音楽を捉えるのは思考,すなわち言語だ.先日,佐渡裕が,憧れのベルリンフィルを振るというドキュメンタリーをテレビでやっていたが,指揮者の仕事の大半は言語能力に依存していると思った.もちろん音楽的な素養は不可欠だが,自分が求める音を団員に伝えるには言語能力が必要だ.言葉を豊かにすることが,音楽を豊かにすることにつながるのだろう.

    2011年3月16日水曜日

    地震

    ヴァンクーバーから帰国して,ドタバタしてたらもう春だ.いや北海道はまだだ.三月だというのに氷点下続き.しかも,二月半ばに温かい日が続いて雪がほとんど解けかけたのに,二月末から大雪が続き,またもや白銀の世界に逆戻り.そして地震.あの揺れはほんとに気持ちの悪いものだった.地震には慣れているつもり.生まれ育った千葉は震度3とか4とか5とかは割とフツーにあった.阪神淡路大震災の時は奈良にいた.あの時の揺れも結構なもんだったが、千葉で地震慣れしてたからそんなに大変ことだとは思わなかった.
    そして今回.鉄筋コンクリート建て6Fの4Fに居たのだけど,そりゃあ気持ち悪い揺れ方だった.P波による縦揺れはほとんどなくて,いきなりS波による大きな横揺れ.しかもかなり長かった.ただまあそれほど大きなものだとは思わず,〆切り間近の論文を書き続けてた.そしたら部屋の外でみんなが大騒ぎをしている.そして妻から電話.妻の実家は奈良.そして神大の出身.阪神淡路大震災の時は実家で寝ていたが,多くの友人を亡くしている.もうすでに涙声.今は娘の懇談会で,娘の小学校だと言う.だけど娘はもう帰った後.家に電話しても出ないのだと言う.とりあえず,オレは無事だと落ち着かせて電話を切る.そしてすぐに家に電話.話し中.で,妻にメールをすると,家に娘がちゃんと帰ってるとのこと.懇談会もなくなり,家に帰るとのこと.子供たちを見て安心したようだ.中学生の息子も,すぐに帰されたそうだ.千葉に住む母親からも大丈夫だというメール.東京・大阪圏の大学・大学院時代の友人たちからも無事だと言うメールがある.まあ,一人,昨夜の飲み過ぎで頭がふらふらしてるのだと思ったという不謹慎な奴もおったが.
    この震災で亡くなった人たち,怪我をした人たち,怪我はしなかったけど家や家族,友人を失った人たち.被災した人たちは様々なだが,それまで続いていた日常生活が瞬時にして途絶え,非日常に変わったことに変わりはない.それに対して私の日常生活は連続している.それゆえに日常生活が断絶してしまった人たちがこの国に今この瞬間いることを,ともすれば忘れがちだ.確かに自然の猛威の前に人間は無力だ.しかし,この震災の中で,被災者の救援にあたっている人たちが,国内のみならず世界中から集まっている.私たちは自然の前では無力かもしれないが,人間に対しては微力であっても無力ではない.私の微力をどのように使うべきか?献金?それも今すぐできる一つの手だ.しかしもっと被災した人たちの心に届くような方法はないものだろうか?もう少し自分にできることを考えてみたい.

    2011年1月6日木曜日

    Vancouver 10th day

    今日は最終日.明日はもう日本だ.と言いつつ,これを書いているのは成田空港.気温は10度近くあり,快晴.出てきた時の裏寒いじゃんじゃん降りのバンクーバーが嘘のよう.バンクーバーは今夜の9時半.そろそろ眠いぞ.バンクーバーからの飛行機はなぜか家族でビジネスクラスへ.なんとラッキーな.一人で海外に行くと時々ビジネスクラスにしてもらえることがあるけど,家族でなんて初めて.ビジネスクラスに乗るのが初めての妻と子供は大興奮.でも妻は途中で気分が悪くなり,娘は眠くて二度目の機内食は食べられず,息子は豪華なリクライニングシートの使い方が分からず,十分にその恩恵を享受できなかったようだ.私はと言えば,アペリティフにシャンパンを二杯,フルボディの赤ワインをグラス一杯,妻の飲み残しの白ワインを半分,ビール(サントリーのプレミアム)を一本,ウィスキー(サントリーの白州12年)のミニボトルを一本,と存分に堪能した.食事もさすがに美味しかった.
    いやいや飛行機の話ではなく昨日のバンクーバーへ話を戻そう.昨日は雨の予報だったが朝はまだ曇り空.最後の日なのでいろいろ行こうということでデイチケットを買って,まずはUBC(University of British Colombia)へ.ここには新渡戸稲造記念公園があり,2年前に出張で来た時には行き損ねた場所.ダウンタウンからバスで30分ほど.新年早々だというのに学生でごったがえしている.ちょうど授業の合間か.地図を確認するとキャンパスはめちゃくちゃ広い.うちのメインキャンパスもかなり広いが,その裕に3倍はあろうか.ここでもリスに餌付けすることを期待して妻と子どもたちはシリアルを持参.しかし寒すぎるのか人が多すぎるのか,リスは見当たらない.記念公園はアジア研究センターに隣接していた.故千葉大教授が万博の際に設計したものらしい.この一角はまさに日本.太平洋の架け橋にならんという石碑と一緒に記念撮影.帰りにトイレを借りようと大学生協らしきところに寄ったが,ない.そして学生の長蛇の列.新入生に学生カードを交付しているようだ.どうも今日から新学期のようだ.
    来た時と同じ,Granvileを通る路線バスで引き返し,Granvile Islandの近くで下車.最終日の夕飯に,先日来た時に購入した格安のスモークサーモンを購入し,妻が一度食べたいと言ってきかないフィッシュ&チップスをお昼ご飯にする.娘にはねだられてチョコチップクッキーを.同じ店でScrumpetなる見たこともないパンがあったので,そのベーコン&チーズ味のものを購入.これが恐ろしくパサポソ.そして味がない.息子のホットドッグセットについてきたコカコーラを奪って流し込む.
    次はいったんダウンタウンへ戻る.ここから2グループに分かれて別行動.妻と息子は最後にStanley Parkへリスに餌やりに,私と娘は先日行ったMetrotownの巨大ショッピングモールへ買い出しに.Waterfront駅までバスに乗り,そこからSkya Trainに乗り換える.やはりここのモールはでかい.娘が見たいというシンクレアとかいう店に付き合った後,前回は行けなかった1ドルショップへ.日本の百円ショップ同様,安かろう悪かろうだ.最後にReal Canadian Supermarketに寄り,夕飯のサラダを購入.モールから出るとかなり強い雨.やはり天気予報は当たった.でもまあ今までもってくれたから良しとするか.それにしても雨がちだというこの時期,これだけ晴れが続いたのが奇跡だ.やはり娘はしずかちゃん並の強力な晴れ女だ.
    Sky Trainとバスを乗り継いでホテルへ.ショッピング嫌いの息子を残し,今度はいつものMarket Placeへお土産を買いに.妻の調べたところでは,空港はダウンタウンよりだいぶ高いそうなので,ここですべてのお土産を買いそろえる.カキの薫製の缶詰が破格に安い(100円以下)なので,これで残りのパスタを茹でてあえることにする.夕飯は,この牡蠣パスタとスモークサーモン,ご飯(息子用.鍋で炊く.前回よりも上手くいった.),レタスのサラダ(マヨネーズを醤油とレモン汁とで溶いた即席ドレッシングあえ).そして私はもちろんカナディアンビール.お風呂に入ると酔いがまわって眠くなるので,お風呂の前にあらかたをパッキングしておく.そして11時頃に就寝.明日は6時に起きて朝食に行き,残りをパッキングしなくては.

    2011年1月4日火曜日

    Vancouver 9th day

    これを書いている今は10日目の朝.昨日は10時過ぎに寝てしまったので,4時に目が覚め,6時に起床.そのおかげで10日目の活動が始まる前に9日目のブログを更新できそう.天気予報では4日(今日)から雨ということで,昨日は滞在中の晴れの日の最終日.そこで晴れの日にやっておきたいことをすることに.まずは家族の全員一致でStanley Park.Granvile Islandかチャイナタウンか,はたまたUBC(University of British Colombia)かで悩んだ末に,女チームがまだ行っていないチャイナタウンに決定.Stanley Parkとチャイナタウンはバス1本で結ばれているので効率よくわまれるだろうと判断.
    Stanley ParkへはDenman通りという初めての道を通って行く.しゃれた低層アパートと瀟洒な一軒家が,うっそうとした木立に沿って立ち並ぶ.とても静かだ.数日前ほどではないが,まだまだ冷え込んでいて,車道はツルツル.バンクーバーで危うく初転びをするところだった.Stanley Parkに近づいた大きな街路樹の幹に第一リス発見.黒いリスだ.そしてその後ろから灰褐色の小柄なリスも登場.つがいだろうか.彼らは街中に住んでいるだけあって人懐っこい.あっという間に妻や子どもたちの掌から餌を取って行くようになる.しばしリスとの交流を楽しみ,名残惜しいが,Stanley Parkへ.ジカンニカギリガアリマス.
    公園で最初に目指すのは,先日,アライグマがいたところ.Lost Lagoonの南端あたりの橋のたもとだ.それほど寒くはないように感じたが,Lost Lagoonの表面は子供が乗っても大丈夫なほど厚い氷で覆われている.そして橋のたもとにアライグマはいなかった.その代わり,一匹のリスが橋の上で死んでいた.先に来ていたおばさんによれば,犬に襲われたのだという.傷などは見当たらず,手を胸元でちぢこめ,真っ黒い目で見つめている様は,生きているかのよう.フサフサのはずの尻尾がシュンとすぼまっているのが唯一の死の兆候だ.ムーミン谷の冬で氷姫を見て凍ってしまった小リスのように,春の訪れとともに命を吹き返すとよいのだが.
    気を取り直して先へ進む.今日は今まで通ったことのない道を通ると決めている.そのうちの一本を選び,Stanley Park半島の突端を目指す.そこにはこれまで辿り着けなかったProspect Pointがあり,その名のとおり,そこからの景色は素晴らしいらしい.1周が9kmほどの小さな半島だが,小高い半島の中の森の中はぐねぐねとうねる小径が複雑に張り巡らされている.ところどころ森が明るくなっているのは,嵐の影響か,巨大な木々が根こそぎ倒されている場所だ.上り坂あり,下り坂あり,木々の根を踏み越えて行く箇所やぬかるんだ箇所などがあり,途中で小鳥やリスに餌をやりいの,主人と散歩中の大きな犬が我々が餌をやっているリスに襲いかかろうとするのに愕然としいの,で,ホテル出発から2時間ほどかかってようやくProspect Pointに到着.もう11時半だ.しかしのんびりとした森の散策は楽しい.そしてNorth VancouverへとつながるLions Gate BrigdgeのたもとにあるProspect Pointからの眺めは,噂に違わず絶景.大きな橋越しに広がるVancouverとNorth Vancouverの間の入り江.そこに浮かぶ巨大なタンカー.橋の向こう,North Vancouerの町並みを見下ろすように,その橋の名の由来にもなった白い峰を仰ぐ.西側には静かな海が広がり,小さなタグボートが意外に速いスピードで街へと向かう.その上空にはカモメと一緒に飛行艇が上空を目指す.
    束の間の開放感を味わった後,再び森へ分け入る.目指すはダウンタウンからStanley Parkへの入り口にあるヨットハーバー.そこらあたりからチャイナタウンへのバスが出ているはず.森を抜けたところは,だいぶ前に行ったライトアップ会場の付近.ここには水族館もある.そして海へと抜ける直前に広い芝生にまばらに生えた大きな木々.そして,いるわ,いるわ,たくさんのリス,リス,リス.黒いのが多いが,茶色に近いものは,灰褐色のものもいる.当然ここでも餌やりターイム!30分以上も餌付けをし,それでもまだ名残惜しそうな子どもたち.彼らをリスから引きはがすと,子どもたちは開口一番,お腹空いた!リスの餌(ホテルの朝食のシリアル)でも食べてとけ!
    今日のお昼はチャイナタウンで食べ歩きの予定なので,途中でMacなどに捕まるわけにはいかない.そそくさとバス停を目指す.チャイナタウン行きのバスが目の前を横切るのを見て,方向は間違っていないことを確認.バスの後を追う.しかし,バス停は見当たらず.まあ一つ先のバス停は市内へ向かう大きな通り沿いなので,そこで捕まえればいい.と思ってその大通りに出ると延々と続く渋滞.後ろを振り返ってもバスのバの字も見当たらない.たしかにガイドブックにバスの時刻はまったく当てにならないとあった.特に,ダウンタウンとNorth Vancouverを結ぶこの大通りはいつも車が長蛇の列.そこでバスを断念し,Skya Trainへ計画変更.しかし,一番近いBurrard駅まででも結構な距離.子どもたちは相変わらず,お腹空いた,疲れた,を連呼する.しかし子どもたちも,先日,息子とお土産に買った肉まんが食べたいので,なんとか辛抱している.Burrard駅から二駅目がBC Stadium & China Town駅.駅から中華街まではまだもう少し歩かなければならないが,空腹は最良のソース.立ち並ぶ乾物屋や八百屋,漢方薬の薬局などを脇目に,先日の肉まん屋を目指す.あった!そして蒸し器には大きな肉まんが鎮座している.英語があまり通じないらしい,感じ悪いお姉さんから,なんとか肉まんを4つゲット.近くの,ベンチだけの小さな公園で頬張る.うーん,至福の一時.空腹に耐えた甲斐があったというもの.子どもたちと妻は,妻にねだられ購入した中華蒸しパンも頬張る.これで夕飯まではもつだろう.バス等のチケットは90分以内なら,バス,Sky Train,Canada Line(空港までのびている),Sea Busに乗り換え放題.というわけで,駅まで戻る時間がもったいないので,中華街からダウンタウンへ向かうバスに飛び乗る.Sky Trainの駅から中華街のあたりまではさほど危険を感じなかったが,中華街からダウンタウンへ向かう通りやそこから手を広げる薄暗い小路は,廃屋やシャッターの閉まった店が多く,落書きやゴミ,浮浪者なども多い.華やかな摩天楼の陰の部分を見るようだ.ただ,ここだけではなく,街中にも乞食はたくさんいる.ただ街角に座って小銭をねだる者,コンビニのドアを空けて小銭をせがむ者,帽子を手に通りすがりの人たちに小銭をせびる者.街頭ミュージシャンも多い.そんな彼らを取り囲むのは全面鏡ばりの高層住宅&ビルであり,彼らの横をポルシェやフェラーリが通り過ぎて行く.決して健全とは言えない社会がここにはある.

    Vancouver 8th day

    えー,今日は何をしたかな?このところ朝起きるのも遅くなり,ついに一日遅れとなってしまった.8日目のブログを更新せんとしている今はすでに9日目の夜.カナディアンビアとお風呂のせいで,すでに瞼は重い...いやいや昨日のことを書かねば.
    昨日は1月2日(日)だったから,女チームと男チームで別行動.女チームは街へショッピングーへ,男チームは山へ,じゃなくてScience Worldへ.そして午後2時に巨大ショッピングモールのあるMetrotown駅のホームで待ち合わせ.
    Science Worldは,新さっぽろにある青少年科学館のようなものらしい.ちょうどこの時期,日本でもやっていた人体の不思議展のような特別展をやっていて,息子の希望により見に行った.人体と脳に関する展示で,以前から脳に興味のある私にはとても有意義な展示だったが,息子にとっては英語が読めず,展示内容を私が翻訳するだけではつまらなかったようだ.これに一念発起して英語を勉強しろよ!息子よ!
    そして家族でMetrotownへ.両チームともお昼を食べていない(女チームはおやつは食べたらしい)ので,まずはフードコートで腹ごしらえすることに.しかし,歩けど歩けど着かない.マップを見ると恐ろしく広い.ざっと桑園ジャスコの5倍ほどある.やっと到達した,こちらも広大なフードコートで,男チームはハンバーガー,女チームはタコスをチョイス.そしてショッピング嫌いの息子を休憩コーナーに残し,4時半待ち合わせで解散.私はまっすぐにスポーツショップへ.まっさきにチェックするのはもちろんバドミントンコーナー.ラケットの品揃え,うすっ!しかもろくなラッケットを置いてない.カナダにおけるバド人気の低さを物語っている.しかもウェアやシューズは皆無.それに比べてランニングやアイスホッケー,スキー&スノボの充実ぶり.こんな国には二度けえへんぞ!まあとにかくかねてから物色していた,薄手だけども温かい手袋をゲットとして待ち合わせ場所(=息子のいる所)へ.だいぶ遅刻して女チーム到着.そして息子が一言.もう4時半なの?こやつは本さえあればいくらでも時間がつぶせるらしい.帰る前に,このショッピングモール内にあるReal Canadian Supermarketで夕飯の食材を調達することに.このスーパーも恐ろしく広い.ここだけで桑園ジャスコの一階分は裕にありそうだ.今日の夕飯はまたもやパスタ.そのパスタコーナーの左手に海鮮コーナー発見.行ってみると生け簀にロブスターといつぞや食べた大きなカニが!Grandvile Islandのマーケットよりもだいぶ安い.私はカナダにロブスターを食べにきたので,小振りなやつを早速注文.カットするかと言われたが,Nooo!と答え,生きたままをビニール袋に入れてもらい帰還.
    男チームはデイチケットという市営交通全線乗り放題チケットがあり,女チームは今買ったチケットが90分間乗り換え放題なので,Waterfront駅でSeabusに乗り換えて,も一度North Vancouverへ.相変わらず乗客はわんさかいる.こんな時間から何しに行くのだろう?ま,それはさておき,Lonsdail Marketの展望台にのぼり最高の夜景を楽しんだ後,すぐさまDowntownへ取って返す.そのまま時間内なのでSky trainに乗り換えてBarrard駅まで行き,バスに乗り換えることに.しかしバスを待っている間に時間切れ.みんなでいつもの道をホテルまで歩く.
    夕飯はReal Canadian Supermarketで,珍しさのあまり購入した餃子とパスタ(ミートソース).餃子には得体の知れない真っ赤な液体とチリソースのような液体.勇気ある妻が真っ赤な液体を皿に空け,試食.普通のお酢だと言う.しかし色からして普通じゃない.まるで血のようだ.私は醤油だけで食べる.この餃子,決して美味しくはないが,まあ餃子と呼べる範囲の味だった.あー,餃子が食べたい.帰国したらすぐに三連休.絶対に餃子を作ろうと決意したのであった.

    2011年1月3日月曜日

    Vancouver 7th day

    明けましておめでとうございます.海外での初年越しです.昨夜は年越しの瞬間を起きていようと固く誓ったはずなのに,10時でダウン.今朝もまた5時半に目覚めてしまいました.しかも,夢に富士山や鷹,茄子はいっさい出てきませんでした.うーん,今年はどうなることやら.
    ま,9時近くまで寝ていた家族を待って,気を取り直して朝食へ.毎日ほとんど変わらぬメニューだが,やはりあると助かる.前日の夜に翌日の食料のことを心配しなくてすむ.ただまあ野菜があるといいなぁ.など言いながら朝食会場へ.遅くなると激混みなのは経験済みなので覚悟して行ったが,拍子抜け.みんな昨夜騒ぎすぎて起きてこれないらしい.いつものように入り口付近から,クロワッサン(他にも甘そうなタルト各種),角切りフライドポテト,ソーセージ,パンケーキORフレンチトーストはショートカットして,スクランブルエッグ&チーズ入りスクランブルエッグORゆで卵,マフィン(他にもベーグルや食パンなど)をチョイス.そして半分に切れているマフィンを焼いていると,隣には見慣れぬ銀色のマシンが.小さな女の子二人とそのお母さんが何かをそのマシンで焼いており,はみ出た生地をヘラでそぎ落としている.そのマシンの焼き型からワッフルマシンであることが分かった.元旦の特別食はワッフルであるようだ.そのことを家族に話すと女チームは大興奮.皿に取ってきたものを平らげ,ワッフル作りへ.3分ほどで出来るようだ.直径20cmほどのワッフルは4つに切れ目が入っているので,4人で分ける.フワフワしていて,しかも生地自体が甘くないのでGood.
    元旦の特別食を満喫したら,Stanley ParkへGo.今日のメインは午後2時過ぎからEnglish Beachで行われる寒中水泳大会の見学.それまで,先日できなかった餌やりをするのだ.最初に訪れた時に小鳥たちに餌をやったポイントはBeaver Lakeのほとり.ホテルからは小一時間ほどかかる.元旦の人気のない街をぶらぶらと散歩する.今日は比較的温かい.これなら公園で凍えなくてすむかも.公園の入り口付近の大きな針葉樹(クリスマスツリーにはもってこいだ)が乱立する芝生の広がった場所で第一リスを発見.すると次々にリスが出没.先日はなかなか餌をやれなかったリスに再度挑戦.ここのリスたちは街に近いせいか,幾分人慣れしている.しばらくすると撒いた餌をとっていくようになった.しかし人の手からは取ろうとしない.唯一,息子の手に近づいてきたが,指の先を噛んで逃げて行った.優雅な半弧を描きながら逃げて行く様は愛くるしい.
    しかしここで時間をつぶしてしまうわけにはいかない.リスもいいが,小鳥たちが直接手から餌を食べてくれる体験がもう一度したいのだ.名残惜しいが,未練を振り捨て巨大な針葉樹が生い茂る森へと足を踏み入れる.その途端,空気が変わる.森の冷気が体を包み込む.見れば周囲の草木は霜が張って真っ白.道の土は固い霜柱で持ち上がり,水たまりは厚いにごりガラスのような氷で覆われている.子どもたちはそのガラスを踏み割って遊んでいる.自分の子供時代を見ているようだ.ふと行く方を見やると,大きな茶色をした毛むくじゃらのものが道をのそのそ横断していった.もしかしてビーバー?
    ビーバーの姿を追い求めつつ,子どもたちが冬と戯れる姿を時々振り返りながら進んで行くと,例の場所に到着.先客が5,6名.やばい.すでに手の先がしびれてきた.しかし妻と子どもたちはそんな寒さもどこへやら,さっそく手袋を脱いだ掌に餌を載せて小鳥たちを誘惑する.たくさんいて,すぐに寄って来る小鳥は体長が5cmほどの本当に小さな鳥.私も餌のない,手袋をしたままの掌を指し出してみる.さすがに餌がないと寄ってこない,と思いきや,アホな一匹が乗ってきた.腹が白く,背と羽は濃い茶色.頭は黒っぽい.その細い足は黒くて細い針金のよう.こんな小鳥たちがたくさん寄ってくれば,そりゃあ楽しいだろう.そうこうするうちにリスたちも登場.リスたちは相変わらず手からは餌を取らない.ふと視線を感じて後ろを振り返ると薮の木の枝に青い鳥が!なんて美しい!頭は黒い鶏冠(とさか)のように,毛がモヒカンになっている.首のあたりは黒に近いが尾の先にいくにつれ青みが増す.濃いメタリックブルー.体長は20cmほど.カメラを向けると薮の中に逃げてしまう.リスに負けず劣らず警戒心が強い.ふと周囲を見回すと仲間が集まってきている.そして次第に警戒心が低下してきたのが分かる.とは言っても人間の手でばらまいた餌を食べようとはしないが,シャッターチャンスは増えた.他にも数種類の鳥たちがいた.そして帰り道にはアライグマも.人慣れしているものの警戒心は強く,顔は常に我々に向けつつ,与えられた餌は手探りでつかんで食べる.やはり野生なのだと分かる.とにかくここStanley Parkは動物たちの楽園であり,人間にとっては癒しの空間だ.
    妻と子どもたちは無心に動物たちと戯れ,私は無心にシャッターを押しているうちに時間はあっという間に過ぎた.全員手はかちこち.震えながらEnglish Beachを目指す.近づくにつれて人口密度はどんどん高くなり,会場らしき浜辺は人でごったがえしている.沖合にはヨットや小型船が待機している.おそらく寒さで溺れた人や心臓マヒを起こした人を助けるのだろう.陽気なかけ声とともに世にも破廉恥な格好をした集団や,仲間内でお互いの仮装を披露し合うグループ,家族で寒中水泳への意気込みを語り合う人たち,などなど,大変な熱気に包まれている.そうして開始!といっても花火が打ち上がるわけでもなく,わぁと歓声が上がったかと思うと,人ごみの彼方の海へ思い思いの格好をした人が分け入って行く.多くの人は肩まで使って引き返し,残りの少数が,沖合といっても浜から20mほどのところに停泊しているヨットや船のあたりまで泳いで引き返してくる.始まる前のあの熱気はなんだったのかと思うほど,あっけなく終了.街へと戻る人の波に乗り,我々もいったんホテルに戻る.もう3時をまわり,夕暮れが近づいている.
    疲れたという,ショッピング嫌いの息子をホテルに残し,三人でダウンタウンへショッピング.The Bayというデパートの地下で高級チョコが半額.孫へのプレゼントにと買いにきていたおじいさんが,しきりにGood buyだというので,たしかにcheapだというと,ここはデパートだからcheapではないとたしなめられた.その後,娘が見たいというH&Mという店にいったり,カナダブランドのRootsという店にいったりして,5時過ぎにホテルに戻る.今日は元旦ということで,夕飯はステーキ.私と娘はポーク,妻と息子はビーフ.前回はちゃんと肉をたたかなかったので,今回は念入りに叩く.そのおかげでビーフもかなり柔らかかった.でもカナダと言えばやっぱりポーク.柔らかく癖がなくて美味しい.元旦は酒屋が閉まっており,ビールは一本のみ.明日こそはと固く心に誓った.

    2011年1月2日日曜日

    Vancouver 6th day

    昨日は市営交通の一日券(デイチケット)を購入して行動範囲を少し広げてみた.まずは来た時に降りたYale Town Round House駅からカナダラインに乗って,King Edward駅へ.そこから山の手へ5分ほど歩くとQueen Elizabeth庭園に辿り着く.このあたり,Vancouver郊外はダウンタウンとは違って空が広い.一軒家ばかりの閑静な住宅街に囲まれるように小高い庭園がある.一番頂上にはドーム型の温室があり,ここだけ有料.それにしても寒い.立派な霜柱があちこちに.小さい頃の冬の日を思い出す.霜柱は冬の到来を告げる.霜柱を踏み砕くのが毎朝の楽しみだった.それを今子どもたちがしている.札幌ではほとんど霜柱を見ない.雪が降ってしまうからだろう.凍えながら遠くにダウンタウンを見る.摩天楼の喧噪が嘘のようだ.
    次はKing Edward駅からダウンタウンのWaterfront駅へ.ここはカナダプレイスやギャスタウンの入り口であり,様々な交通機関の乗り換え駅である.ここからSea Busに乗り,対岸のNorth Vancouverへ.North Vancouverはバンクーバーオリンピックの会場にもなったウィスラーへの入り口であり,近郊にはいろいろなゲレンデがある.100人近く乗れるSea Busにも多くのスキーヤーやスノーボーダーが乗っている.しかし我らの目的はLonsdale Quey Market.ここで手頃な海鮮をゲットすること.まずは腹ごしらえに,いい匂いのするスープとパンのセットを.スープの量が多いので二人前を4人でシェア.ただし付いて来るパンだけでは少ないので,ダウンタウンにもあるという美味しいパン屋でパンを追加購入.野菜とTurkeyのエスニックなスープと,じゃがいもとサーモンのスープは,どちらも具沢山で美味しい.Turkeyはこちらではメジャーな肉のようで,スーパーでもよく見かける.とても淡白でヘルシーそうな肉だ.雑貨,海鮮,肉,野菜,果物,おもちゃなどの店とともに,様々な国の料理を出す店が立ち並ぶ.海鮮はGrandvile Marketの方が安いし,品揃えも豊富なのでそちらで購入することにし,オレンジと梨,そしてパパイヤを購入.意外にも,ヴァンクーバーは果物が安くて美味しい.ダウンタウンに戻る前にマーケットの展望台に登る.展望台といっても,港に突き出した鉄塔のようなもの.結構な高さがあり,しかも隙間だらけの階段や手すりが恐怖を誘う.しかしその恐怖に耐えれば,これまた絶景が待っている.といってもThe Look Outほど高いわけではないが,海の向こうにダウンタウンの近代的な都市が広がる光景は絵はがきのよう.夜景はさぞかし奇麗だろうということで,日が沈んでからまた来ることにする.
    Waterfrontに戻ると,女チームはショッピング,男チームは危険だと言われているチャイナタウンへ.Waterfront駅からスカイトレインに乗り,BCスタジアム&チャイナタウンという駅が最寄り駅.駅の周辺は高層アパートが立ち並んでいる.駅から徒歩5分ほどで中国式庭園に辿り着く.三国志が好きな息子のために土産物屋によるが,まあ何もカナダで買うような物はない.そしていよいよ中華街へ.漢字表記の看板に,海産物や茸類の乾物屋,チャイナドレスや勾玉を扱う土産物屋など,アメリカ的なヴァンクーバーの中でも異質な空間が広がっている.大きな海鮮饅頭が6個入った袋を6ドルで購入し,待ち合わせのEnglish Beachを目指す.今日こそ日没を見るのだ.
    C21番というバスだけがビーチへ行っているので,ビーチの方へ歩きつつ,そのバス停を探す.しかしなかなかなく,結局ビーチまで歩いた.到着したのは待ち合わせ時間である4時の5分ほど前.到着してほどなくして女チームも到着.すでに人でごった返す砂浜でその時を待つ.冬の日没は速い.キツラノのMOV上空にあった太陽がみるみるうちに沈んで行く.オレンジ色に輝く宝石を載せた指輪のようだ.その宝石が徐々に小さくなり,ついには薄紅色の空だけが残され,それも束の間,青みがかった黒いベールが空を覆って行く.日没は日の出と同じように神秘的だが,日没は日の出よりも厳かだ.
    疲れたという軟弱な息子をホテルに置いて,残る三名で再びNorth Vancouverを目指す.今度はバスでWaterfront駅へ.なんと5時以降は市営交通のすべてが無料になっている.もちろんSea Busも無料だ.大晦日にはこのような特別な計らいがあるようだ.North Vancouverから眺めるダウンタウンの夜景は圧巻だ.海に浮かぶピンクゴールドの鉱山のようだ.
    年越しの夕飯は海鮮饅頭とトマトソースのパスタ.そして年越しには蕎麦の予定だったが,睡魔に負けてまたもや撃沈.次いで娘が撃沈し,新年のカウントダウンがはじまる直前に息子もダウン.年明けまで起きていた妻であったが,隣室の若者たちのおおはしゃぎで寝付けなかったようだ.未だに多くの店でクリスマスの余韻を引きずっているのに,同時に新年を祝うというのも不思議なものだ.